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セクハラ事件

セクハラ事件


1ヶ月のロンドン生活を終え、私はウェールズに向かった。

その施設で待っていたのは、

言いたい事が言えない、分かってあげたいけど分かってあげられない

憤りだった。



あれは、着いてすぐの頃、ある入居者の食事介護についた。

彼は、あまり、口が開かない。だから、声もかぼそい。

聞き取りが至難の業だった。

朝、彼は「シリアルにホットミルクをかけてきて」という。

早速、とりにいく。が、ホットミルクがきれていた。

だから、説明する。

「今、きらしていて、暖めてもらっているから、待って」という。

「もう一回言って」という。

ゆっくり大きな声でいう。

そしたらうなづく。

分かってくれたと思ってた。

なかなか、待っても、ホットミルクができない。

そしたら、急に彼はチームリーダーに

「ココにシリアルを頼んだけど、いつまでたってもくれない」と愚痴る。

そしたら、リーダーは、私が言ってたのを聞いてたから

「ココはちゃんと、ミルクをきらしているから待ってと言ってたわよ」

と、フォローしてくれた。

やっと、ホットミルクができ、お腹がすいているだろうって思って

食べさせてあげる。

そしたら、すっごく熱かったらしくて、舌を火傷させてしまった。

急に悲しくなった。

私の英語が通じない空しさ、思いやりの空回り。

泣き出して、部屋に戻ってしまった。

皆が心配してくれた。



そこで、用務員兼運転手がやってきて、

車で出掛ける用事があるから、一緒に行こうという。

車に乗るとすぐ、彼は必死に「どうしたの?」って聞く。

私がようやく重い口を開いて、泣き出すと

急に車を止める。

「え?」って思った瞬間、顔中、キス攻めにあう。

でも、泣いているし、何もいえない。

必死に顔を下に向ける。

きっと、慰めてあげようとしているんだから、っと自分に言い聞かす。



それから、エスカレートした・・・。

施設内で会えば、キスを求められるし、

セクハラだろ?っていう会話もしてくる。

でも、その施設は、辺鄙なとこにあって

近くの町までは歩いて25分ぐらいかかる。

しかも、丘の頂上付近にあったため、帰りは40分かかる。

だから、運転手の彼が街に下りるときに、

乗せてもらったりするから、下手に拒否もできない。

上司に愚痴ることもできなかった。



ひどいときには、一度だけ耳をなめられた。

それには、かなり腹が立って、文句をいった。

それからは、顔に出すようになった。

施設内では、無視した。

そしたら、ある日、

街まで送ってもらってたら、

「ココはもう僕のこと、愛してくれてないんだね?

前のような気持ちはもうないの?」って言ってくる。

“LIKE”を使うなら、まだマシだが、“LOVE”を使う。

ゾッとした。

だから英語の分からないふりをした。

「ごめん、何を言っているかさっぱり分からない」って言った。

何回か説明したけど、それでも分からないふりをした。

それ以降、セクハラはなくなった。

恐いね。私は何とも思ってなかったのに。

外国人は挨拶でキスするし、下手に、拒めなかったもんな。

文化の違いを感じました。



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